* * *

「もしもし。」
「瑠生が勝手にスマホ触ったみたいでごめんね!」
「あ、いえ。僕も適当に置きっぱなしにしてましたし…。ちゃんとロック設定とかします。」
「してなかったの?」
「そうですね。勝手にスマホを見ようとするほど親しい友人がいないので。」
「瑠生みたいな人もいるから気をつけてね…。」
「ふふ、はい。今度から気をつけます。綾乃さん、もう寝るところですか?」
「うん。その前に様子が気になっちゃって…。」
「綾乃さんからの電話、嬉しいです。それに、瑠生さんとも色々お話できて楽しいですよ。」
「変なことされてない?言われてない?」
「はい。瑠生さん、優しくて明るくて、楽しい方ですね。」
「うーん…?」

 電話越しに聞く綾乃の声が低く唸っていて、健人は思わず笑った。

「心配してくれてありがとうございます。それに電話も、ありがとうございます。色々話して仲良くなれるように、頑張ってみますね。」
「嫌なことは嫌って言っていいからね、本当に!」
「はい。」

 早く綾乃に休んでほしいという気持ちと、名残惜しくて終わりにできない気持ちが一緒にある。

「じゃあ…色々申し訳ないけど今の私じゃ何もできないので寝ます!」
「はい。おやすみなさい、綾乃さん。」
「おやすみ、健人くん。」

 切れたスマートフォンを健人は見つめた。