「じゃあ綾乃さん、瑠生さんはうちに泊まってもらいますね。」
「…迷惑だったら追い出していいからね。」
「そんなことしないですよ。じゃあ行きましょうか。」
「おー!」
「お願いしますでしょ!」
「ってぇ!何回殴んの?」
「殴られるようなことしないで!」
「わーったよ。あ、ちょっとコンビニ先行ってていい?すぐ近くのローソン。」
「あ、はい。」
「んじゃなー、綾乃。」

 嵐が去ったとはこのことを言うのだろう。どっと疲れて、綾乃は小さくため息をついた。そんな綾乃を見て、健人は優しく微笑む。

「綾乃さんはゆっくり休んでくださいね。多分、瑠生さんは僕がどんな感じの人なのかなって、ご家族として心配してるような気がしたので。…なんとか合格点がもらえるように頑張ります。」
「合格点も何も…あの子が不合格だよ…。もう突然何なの…。」
「お姉ちゃんな綾乃さんが見れて、得しちゃいました。」
「殴ってただけだよ?」
「仲良しでいいなって思いましたよ。って、そろそろ行きますね。」
「…何卒よろしくお願いします。」
「ふふ、はい。あ、じゃあ最後に。」

 突然視界が健人のコートでいっぱいになる。軽くぎゅっと抱きしめられて、耳元に唇が寄せられた。

「おやすみなさい。」
「っ…!」

 声が聞こえた方の耳を思わず綾乃は抑えた。満足そうな笑みを残して、ぱたりとドアが閉まる。

「…攻撃力が…高いっ…!瑠生がいなくてよかった…。」

 こんなにへにゃへにゃの自分は見せられない。