「なんだよ綾乃、嫉妬?」
「このバカ!」
「ってぇ!」

 三発目が繰り出された。

「俺、バイトあるし明日中にはこっち出るんだよな~。健人、大学生?」
「はい。」
「ってことは今日の夜しか健人と話す時間ねーじゃん?男同士の話したいから、綾乃がホテル行く?」
「…健人くんにならまだしも、瑠生に一日だけでも部屋を明け渡したくない。」
「あの…じゃあ、瑠生さん、僕の家に来ますか?」
「えっ!?」

 思わぬ提案に思った以上に大きな声が出たのは綾乃だった。瑠生の目はキラキラと輝いている。

「いいの?」
「ダメに決まってるでしょ!オーナーさんにも健人くんにも迷惑かけられないよ。」
「多分喜ぶと思いますよ。お客さんが好きな人ですし。ちょっと電話して聞いてみますね。」

 健人がスマホを取り出してタップする。するとすぐにオーナーが出た。

『どうしたんだい?』
「あの、綾乃さんの弟さんをうちに泊めたいんだけど、大丈夫かな?」
『そりゃあすごいお客様だね。布団の予備があったと思うけど、干してないから少し埃っぽいかな。僕のと変えておこうか。』
「健人くん、代わってもらってもいい?」
「あ、はい。どうぞ。」
「オーナーさん!」
「あ、湯本さん?」

 綾乃は健人のスマホを耳にあてた。