「ほら、瑠生も。」
「あ、湯本瑠生です。ってか、見た感じ若くね?」
「あのね、あんた本当に言葉遣い!」
「ってぇ!」

 綾乃がぽかっと瑠生の頭を小突く。それを見て、健人は柔らかく微笑んだ。

「弟さんの前だとそういう感じなんですね。新鮮で可愛いです。」
「っ…健人くん!?」

 慌てたのは綾乃だった。弟が現れても通常運転の健人に、綾乃の頬は赤く染まる。そんなところを弟に見られたくはないのに。

「あ、すみません、長居しちゃって。僕、失礼しますね。綾乃さん、瑠生さん、おやすみなさい。」
 
 そう言って玄関から出ようとした健人の腕を掴んだのは瑠生だった。

「…気に入った。」
「え?」
「俺、今日は健人と話す!」
「はぁ?この家に3人泊まるための布団とかないよ。そもそも事前に連絡してきなさいっていつも言ってる…。」
「綾乃抜きがいいんだけどな~。」
「人の話聞きなさい!」
「って!」

 また一発お見舞いする。懲りないこの弟は、気付けば健人の肩に腕を回している。

「今何歳?同い年?年下?」
「19歳です。」
「年下じゃん!健人って呼んでいい?」
「はい。お好きに呼んでください。」
「ちょっと瑠生!」

 綾乃だって呼び捨てになんてできていないのに、この男は出会って3分も経たないうちに謎に距離を詰めている。