「私が健人くんにつりあう?見合う?人間になれるように頑張りますって話だからね。ちょっと健人くんの前でするにはさすがにかっこ悪すぎて、言えなかった。ごめんね、心配させちゃって。」
「僕が綾乃さんにつりあうように頑張るんで、綾乃さんはあんまり頑張って遠くに行っちゃわないでください。ずっと追い付けません。」

 そう言って手がぎゅっと強く握られる。

「私、遠い存在かなぁ?」
「たくさん色々なことを考えてるから、大人だなって思います。」
「それは健人くんもでしょ?絶対年の割に大人びてるよ。」
「そうですか?最近は綾乃さんのことばっかり考えてますけど、それでも大人びてます?」
「っ…ま、また!攻撃力が高い!」
「攻撃してません!」

 慌てた様子の健人に、綾乃は小さく吹き出した。

* * *

「送ってくれてありがとう。」
「はい。あ、あの、綾乃さん。」
「なぁに?」
「…綾乃さんは、スキンシップは周りの目がないところの方が良い、ですよね?」
「…そ、そうだね。でもいきなりどうしたの?」
「長居はしないので、玄関にだけ入れてもらってもいいですか?」
「え、あ、うん、もちろん。」

 突然の申し出に少し驚いたものの、送ってもらってすぐに帰すのも忍びなくて、少しお茶でも飲んでいく?と聞こうか迷っているところだった。そのままあがっていく?と言えばいいかな、なんて呑気に考えながら、綾乃はカバンの中から鍵を取り出した。