「はぁー…もう、お二人、本当によく似てらっしゃるんですよ…。だから私は、みっともなく健人くんの前で泣いたり、弱いところも洗いざらい吐いてしまって…。私の方が年上だから、甘やかしてあげたりリードしたりできたらよかったんですけど…。そんなの全然できなくて、でも、…できなくていい、というか…一緒に考えたいって言ってくれるような、優しい人で、健人くんは。」
「はい。あの子は本来、そういう風に育てられた子ですから。」

 オーナーが微笑みながら頷いた。

「…私も泣くし、健人くんも泣くしで…なかなかぐちゃぐちゃな現場だったんですけど…でも、頑張りたいと思います、私。」
「健人が、人前で泣きましたか?」

 少し驚いたような表情で問いかけた。

「…私が言ったことだったのか、頭を撫でたことがまずかったのか、すごく静かに…泣いたんです。」
「…なるほど。それを湯本さんに受け止めてもらえたんですね。」
「…ちゃんと受け止めきれていたかは微妙です。ちょっと、自信がないです。」

 綾乃は右手の人差し指で頬を掻いた。肩を貸したことも、抱きしめたことも、頭を撫でたこともあの時考えてしたことというよりは、そのまま泣かせておきたくなかったからこそ咄嗟に出た行動だった。
 丁度注文していた料理が届いた。思っていた以上のボリュームで、お腹が空いていたことを思い出す。

「さて、続きはいただきながらにしましょう。」
「はい!」

 温かい料理が仕事疲れにしみわたる。スプーンを置いて、オーナーが口を開いた。