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3月下旬の火曜日。健人は突然、バイト先のオーナーでもある叔父から爆弾を落とされた。

「夕飯作ってあるから適当に増やしたり、温めたりしなさいね。僕、ちょっと湯本さんとご飯食べてきます。」
「ん!?綾乃さん!?」
「あぁ、やっぱり言ってなかった?まぁ、気になるなら直接聞きなさいね。そんなに遅くはならないから。」
「あ、ちょっと!」

 無慈悲に閉じられた玄関のドア。なぜ自分は抜きで、叔父となのだろう。不安というわけではないが、なぜという疑問に対する正当な答えを、自分ひとりでは見つけ出せそうにない。

「…叔父さんが帰ってきてたら、綾乃さんに連絡して聞こうかな。」

 なるべく相談したいと綾乃には言われている。想いを確かめ合って2週間ほどしか経っていないのに、何かがあったとは考えにくいし、綾乃が言わないということはまだそのタイミングではないのかもしれない。急かしたいわけではないが、気にはなってしまう。
 店で顔をあわせるとちょっと気恥ずかしかったりする素振りを見せてくれるのが可愛かったことを思い出しても、関係が悪くなったとは考えにくい。

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「お待たせしました!」
「いえいえ、そんなに待ってないですよ。それよりも、僕が行きたいところでいいんですか?」
「もちろんです!こちらが相談…というか、報告があってお呼びしたので。」
「ではお言葉に甘えますね。まずはお店まで行きましょう。気になってて、行けていなかったところなんですよ。」

 綾乃は最寄り駅の一つ先で降りた。オーナーが行きたがっていたお店があるとのことで、今日はそこで報告をするつもりだった。
 駅から徒歩5分ほどでお店に着く。予約をいれていたこともあり、スムーズに着席できた。