「勝手に色々、一人で考えちゃってもやもやしちゃうので、なるべく相談させてもらってもいいかな?」
「はい、もちろんです。なんでも一緒に考えたいです。すれ違いたくないし、こうやって綾乃さんが泣いちゃうことがないようにしたい…です。頼りないですけど。」
「私も頼りないよ。ぐずぐず、健人くんのまっすぐな気持ちに向き合わずに…逃げ道ばっかり探してて。」
「…無理して、僕に合わせてますか?」
「ううん、そうじゃなくて、私が自分の自信のなさに負けそうになってただけ。健人くんにはもっといい人の方がいい、その方が絶対に幸せになる、私じゃ役不足だって。あと、恋愛面においてだめなところがたくさんあるから、付き合うってことにしてすぐ幻滅されちゃったら嫌だな、とか。」
「…もっとはっきり、好きって伝えた方がいいですか?」
「へっ!?」

 話があらぬ方向に飛んで、面食らったのは綾乃だった。

「綾乃さんのこと、僕、ちゃんと好きですよ。他の人なんて知らないです。」
「っ…そ、そうだよね。ごめんね、私が自分に自信がなくて、健人くんの気持ちを上手に受け取れなかっただけ!健人くんが誰かに好きって伝えるのは、すごく勇気が必要なことだったのに、その勇気もあわせて素直に受け取れなくてごめんなさい。気持ちはちゃんと伝わってるし、…お家の人のことも、話してくれてありがとう。言いにくいことだったでしょ?」
「…言いにくいというか、伝えていいのかなと思っていました。」
「どうして?」

 綾乃はそっと、健人の手に触れた。すると、健人は小さく口元に笑みを浮かべて話した。

「…綾乃さんのこと、信じてなかったとかそういうわけじゃないんですよ。」
「うん。」
「でも、楽しい話じゃないし、可哀想だと思ってもらいたいわけでもなくて…難しいな…僕のひととなりを知ってもらうために伝える必要のあることだと思うけど、それを伝えて、重たく背負わせたいものでもなくて。」
「…重いとか、そういう風には思ってないよ、全然。」

 綾乃は健人の手を上からぎゅっと握った。