「えっと、妙に重苦しい雰囲気にしちゃってごめんね。ずっと言わなきゃなって思ってたことを、…聞いてもらいたくて…。」
「…僕も…。」
「え?」
「僕のことも、話さなきゃいけないことがあって。」
「そっか。えっと…どうしよう、この場合はどっちが先に話したら…?あ、でも健人くんの話を先に聞いてから話すのは私がずるいか…。」
「ずるい?」

 綾乃は力強く頷いた。

「健人くんはもう、気持ちを話してくれたでしょう?それに対して私は待ってくださいって言ってる状況だから。だからそれは、健人くんに対して不誠実だと思ってて…。」
「…告白の返事をくれるってことですか?」
「…そう、です。」

 決まっているような、決まっていないような曖昧な返事を口にしようとしている。その自覚はある。

「…お店にも相変わらず行って、2回デートをして、やっぱり嫌なところは一つもなくて、…優しくていい子。健人くんは私にとって、そういう人です。絶対に幸せになってほしい人、ずっと優しさに包まれていてほしい人、だと…思ってて、だから…私は…。」

 声が震えた。思わず俯いてしまい、うまく目を見れないまま、綾乃は言葉を続けた。

「…健人くんに向けてもらった気持ちを、同じように返せるのか、不安です。悲しませたくないし、傷つけたくないから…。私は、上手じゃない、ので。好きな気持ちを伝えることも、行動で示すことも。」

 多分、自分のせいなのだ。もっと上手く自分がやれていれば、あんなことにはならなかった。

「綾乃さん。」
「はい…。」
「告白は、やっぱり迷惑でしたか?」

 綾乃はパッと顔を上げて首を横に振った。

「迷惑なんかじゃない!…びっくりしたけど、嬉しかった。」
「手を繋いだのは、嫌でしたか?」

 綾乃はまた首を横に何度も振った。

「綾乃さんは、僕のことが…。」
「…好きだよ。好きだなぁ、可愛いなぁって、いっぱい思ったよ。」

 泣きたいわけじゃないのに、目が熱い。