* * *

「それで?翻弄されて帰ってきたと。2回とも。」
「…そうなるね。」

 プラネタリウムから2週間後には水族館に行った。次は3回目のデートになるわけだが、特にその口約束はしていない。

「やっぱりいい子なんじゃない。」
「うん。間違いなく、非の打ちどころのない、とてつもなくいい子。」
「じゃあ、次のデートで綾乃から言うしかなくない?」
「答えを、だよね。健人くんの気持ちに対する。」
「…何をさ、そんなに躊躇うことがあるの?」
「…誠実さ、かなぁ。」
「綾乃の?」
「うん。…健人くんはずっと誠実だよ。」
「それもそっか。」

 間髪入れずに「綾乃の?」と入れてくるところが聡美らしい。だから彼女のことが綾乃は好きだ。

「…前の彼氏って、綾乃が就職する前だよね?いつだっけ?」
「大学3年の冬に別れた。」
「それ以降彼氏なしだっけ?」
「うん。」
「なんで別れたかとかって、話してくれてないよね?」
「…うー…ごめん。話してないね。」
「綾乃が話しにくそうだったから多分、あえて聞かなかったんだと思うんだけど。」
「…多分そうだと思う。適当に流してくれてありがたかったよ。」
「それがさ、綾乃が新しく彼と踏み出せない原因じゃん?こうなってくると。」
「…そうだよねー…。気にしてないつもりだったんだけどなぁ。」

 綾乃は大きくため息をついた。誠実であるために、いつの間にか積もった、愛にも恋にも似た、ただそれだけでもない『好き』の気持ちを伝えるためにやるべきことは、どんな結末になったとしてもきっちり話すことだ。

「…たくさん気にかけてもらったから、…まぁ、正直に話すべきだよね。向こうはずっと正直だったんだから。」
「というか、私はそういうの全部話してもなお、綾乃がいいって言われたときのことを真剣に考えるべきだと思うけどね。」
「へ?」