「ヒーリングプラネタリウム…いい香りがする感じのがある!アロマみたいな香り、苦手とかある?」
「いえ、大丈夫です。」
「じゃあ、このプラネタリウム行って、どこかでご飯食べようか。チケットの予約は私やるね。」
「え、でもお仕事で忙しいのに。」
「大学の勉強もしてバイトもして、忙しいのはお互い様だよ。それでね…。」

 綾乃が気になっていたお金の面で、名案が思い付いてしまった。…これを拒絶することはない、と思いたい。

「ご飯は健人くんにごちそうになっていいかな?その代わり、プラネタリウムは私が出します!」
「え、でもあの…それで綾乃さんはいいんですか?」
「もしかして、全部払う気でいた?」
「はい。」

 あまりに迷いなく言うものだから、デート当日ではなく先に確認しておいてよかったと心底思う。当日この調子だったら、罪悪感で胃がよじれていたかもしれない。

「健人くんに全部払わせるとか私が罪悪感で死んじゃうので、絶対払わせてください。プラネタリウムと、歩きながら食べたくなったものとかそういう細かいのも私が出します!健人くんはご飯係。健人くんがどうしても嫌って言うなら考えるけど、ここは飲んでもらえると嬉しい…。」
「綾乃さんの負担、大きくないですか?」
「全然!というか、プラネタリウム行けるのが今、じんわりと嬉しい。実は好きなの!」

 場所が決まって、お金のことが決まって、もやもやしたものが少しずつなくなっていく。きちんと話し合えることは、本当に大事だ。

「…綾乃さん。」
「うん?」
「僕が気付けていないことがあったら、今後も言ってくださいね。綾乃さんの話、ちゃんと聞きたいですし一緒に考えたいです。」
「…うん、ありがとう。これからはちゃんとそうするね。」
「はい。」

 目が合えば、にっこりと微笑み返してくれる。この優しい時間と、この優しい人がやっぱり好きだ、とそう思う。