「…悩ませてましたか。」

 落ちた声のトーンに、胸の奥がきゅっと苦しくなる。健人のせいではないのにと、気持ちがはやる。

「健人くんのせいじゃなくて、あの、私が色々考えすぎてただけというか…。」
「何を考えていたのか、聞いてもいいですか?」

 先に言わなくてはならないのは恥ずかしいが、先に聞かなかった綾乃が悪い。そう思って口を開いた。

「…どこに行けば、楽しく過ごせるかとか…。」
「…僕も同じこと考えてました。でも、綾乃さんが好きなものって、まだあまり知らないなってことに気付いて…。」
「同じ同じ。私もそこで行き詰って、行き詰った先で別の問題にもぶつかってって感じ。」
「出かけたいって言ったの僕なのに、すぐに提案できなくてすみません。」
「ううん。どこ行こっかってすぐ相談すればよかったね。ごめんね。」

 綾乃は小さく笑いかけた。気持ちは同じだったということがわかってホッとしたのかもしれない。綾乃の笑みにつられて、健人にも笑顔が戻ってくる。

「さっきね、オーナーにアドバイスを貰ったから、一緒に考えてもらってもいいかな?」
「はい。なんて言われたんですか?」
「カップルが多くてちょっと敬遠してしまうところ。」
「え?」
「あ、え、えっと、多分、いわゆるデートスポット的なところに行ったら大丈夫なんじゃないかなっていう…こと、なんだけど…。」
「デートスポット…と言っても経験がないのですぐどこがいいとか提案できないんですけど…デートスポット…。」

 綾乃がスマートフォンで検索をかける。画面を見せると、健人との距離が縮まった。

「水族館、映画館、プラネタリウム…。」
「この中だったらプラネタリウムがいいな、私。ちょっと見てみてもいい?どういう内容がやってるのか気になる。」
「何種類もあるんですか?」
「多分何個かやってるんじゃないかな。あ、ほら。」

 顔を上げた先にあった健人の顔が思いのほか近くて、少しだけ耳が熱くなる。健人の方はというと、特に気にした風もない。

(ぐぅ~…戦闘力も高くて、防御力も高い~!)