* * *

「相変わらず仲がいいねぇ、お前たちの両親は。」
「パパがママのこと大好きだからね!」
「お母さんもお父さんのこと、大切にしてると思うけど。」
「父さんの愛が重すぎ!俺らに対しても結構過保護だなーって思うし、母さんに対してはより一層!」
「お前らもちゃんとそうやって認識してんのかよ。」

 瑠生ははぁと軽くため息をついてから笑った。両親たちに心の中で話しかける。『お前ら、親になってもいちゃいちゃしてんのかよ』と。

「でも別に、私たちがいる前でいちゃいちゃベタベタしてるとか、そういうんじゃないよね。」
「うん。」
「まぁさすがに親だしな。」
「でも結局さ。」

 博人が暁人の方を見た。暁人は言いたいことを察したのか頷いた。

「お父さんの一番はいつだってお母さん。」
「ね!でもそれがいいんだよ。」
「まぁ、別に子供が一番じゃなきゃだめってこともないしな。」
「随分できた子たちだよなぁ。いい子に育った、本当に。さすが綾乃と健人の子って感じがする。」

 3人の子たちを見つめて、瑠生は微笑んだ。一番近くにいた日菜乃の頭を軽く撫でる。

「ちっちゃい頃からずーっと見てきたけどさ。昔っからほんとにお前たちは3人とも愛されて、大事に想われて育ってきてんだよなぁ。」
「そういうこと言うと瑠生くん、おじさんみたい~。」
「みたいじゃなくておじさんです。」

 早いもので暁人の年齢は、綾乃と出会ったときの健人の年齢に重なるくらいの年月が過ぎた。

「…暁人もあっちで、誰か大事な人に出会うかもしんねぇなぁ。」
「何の話?」
「健人が綾乃に出会ったのは、19歳になる年なんだよ。」
「あっ!なるほど。だから暁人にも同じことが起きるかもってこと?」
「そうそう。でも暁人は大丈夫だな。」
「何が大丈夫なの?」
「どうやって人を大切にすればいいのか、ちゃんとわかってる。遠くに行くからそれなりに心配はするけど、ちゃんと大丈夫だろうなっていう信頼もあるよ、俺は。」

 瑠生が真っすぐそう言うと、暁人の目が少しだけ潤んだ。そういえば小さい頃はよく泣いていた。そこは健人を受け継いだらしい。しかし、2人の妹弟の前で泣くわけにもいかずに瞬きの回数を増やしてやり過ごしたようだ。

「…ありがとう。」