* * *

「ちょっと健人と外出るけど、買い出しとかあるならやるよ?何かある?」
「二人で相談して食べたいものがあったら何でもどうぞ。買ってこなくても今日の夜はどうとでもなるから、無理して買わなくても大丈夫よ。お金は後で請求してね?」
「いやいや、こちとら社会人だから払えるよ、大丈夫。じゃあなんか思いついたら買ってくるね。」
「お願いね。」
「あ、俺も行く!」

 ひょこっと顔を出したのは瑠生だ。

「邪魔じゃねーならついてっていい?」
「はい、ぜひ。」
「ちょっと適当にこの辺ふらふらするだけだよ?」
「俺らの母校とか見たいだろ、健人。」
「はい!」
「…結構仲いいよね、瑠生と健人。」
「まぁ、LINEする仲だし。」
「そんなに頻繁に!?」
「時々、瑠生さんが俺のこと心配して連絡くれて…。」
「瑠生は自分の心配しなさいよ。…まぁいいや。とりあえず行ってくるね。」
「気をつけてね。」

 3人で外に出る。夏に比べると暗くなるのが早くなって、秋が近付いてきたことを感じる。影が3つ伸びていくのが不思議な感じがして、綾乃は何となく伸びていく影を見つめながら、そのままのんびりと歩く。

「まずは俺らの小学校行くか。」
「近いんですか?」
「歩いて10分くらいかな。子供の足でそのくらいだったから、今はもっとあっという間かも。」
「俺が入学したころとかはさ、綾乃に手ひっぱってもらってたんだぜ?ちょっと羨ましいだろ、健人。」
「…そう、ですね。手を繋いで学校に行く…姉弟がいるからできることかもしれないですね。いいなぁ。」
「今やる?」
「へ?」
「姉弟ごっこっつーか、なんか少女漫画とかでよくあるやつ。幼馴染系の。」
「あー…なんか、昔読んでたやつだね、それ。幼馴染の女の子取り合うやつ。」
「そーそー。俺と綾乃で健人取り合うか?」
「健人真ん中にしよ。」
「えぇ?綾乃ちゃんじゃないの?」
「ここはゲストの健人が真ん中でしょ。」

 そう言って、綾乃は健人の手に指を絡めた。

「うわ!付き合ってるっぽいことしてやがる!」
「っぽいじゃなくて付き合ってるからね実際。」
「俺は普通に繋ぐからな。」
「はいはい。健人、瑠生が気持ち悪かったら手を振りほどきなよ?」
「ひでぇ!」

 健人の手をとってぶんぶんと大きく振りながら歩く瑠生と、いつもの通りの温度と歩調で歩く綾乃。そんな二人に挟まれて、ちょっとした幼馴染気分とかいうものを味わってみる。

「不思議な感じ。見慣れた道に健人が普通にいるの。」
「な。でも全然違和感ねぇ!」
「…両手繋いで歩くなんて、小さい頃振りですよ。…景色が懐かしいわけじゃないのに、…懐かしいな。」

 綾乃と瑠生は健人の手を握る方の手に強く力を込めた。