「…真面目だね、本当に。」
「これは自分で考え付いたことじゃなくて、叔父さんがそうした方がいいよって言ってくれたことなんだけどね。」
「そっか。さすが、私たちよりも大人な意見。」
「うん。でも、叔父さんがこうやって、そうだな…俺が意見を出したことに対してこうしたらいいんじゃないかみたいな風に意見を出してくれることって今まであんまりなかったから、ちょっと嬉しい。」
「へぇ、意外だなぁ、なんか。」
「そうかな?でもそもそも、俺もあんまり相談とか…してなかったかもしれないけど。」
「じゃあ、健人に相談されて多分嬉しかっただろうね。」
「…だといいな。」

 8月の中旬には二人で墓参りに行った。あの日から少しずつ、ぽつりぽつりと健人が思い出を口にすることが増え、綾乃が静かにそれを聞くようになった。アルバムは何冊かは綾乃の家に置いてあり、思い出話が出る度に開いて、小さい頃の健人を見ては二人で顔を合わせて笑う。そんな穏やかな日々を過ごしながら、いつの間にか9月を迎えていた。

「3連休のところで行こうかと思ってるけど、有休も余ってるから有休使っても行けるし、健人のバイトに合わせるよ。」
「3連休は忙しいからバイトいれちゃったな。金土日お休みなのはここ。」
「じゃあ金曜有休にする。」
「ごめんね、3連休にバイト入れちゃって。」
「そこは忙しいの、仕方ないもん。2泊3日になっちゃうけど大丈夫?」
「泊めてもらっていいの?日帰りで帰ってもいいけど…その…ご家族でゆっくりとか…。」
「あーないない。健人が来るなら健人にずーっといてほしいって言うタイプの親だし弟だよ。」
「…大丈夫かな。」
「大丈夫。…というか、私がこうやって家族にちゃんと紹介する彼氏って健人が初めてだから…めちゃくちゃ喜んじゃうと思う。」
「…初めて?」
「うん。そもそもあんまりそういう話、家族にしてこなかった。恥ずかしいってのもあったけど、…上手くいく自信もなくて。」

 健人が綾乃の手にそっと自分の手を重ねた。

「…頑張るね。ちゃんと上手く、綾乃ちゃんのこと大事にできるように。」
「…ほんっと、敵わないなぁ。」

 綾乃はぽすんと健人の胸に頭を預けた。

「ね、ぎゅってしてもいい?」
「うん。そのつもりで頭預けたよ、私。」