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 のんびりと綾乃の家に行き、泊まるのに必要な荷物を詰めてまた同じ道を歩いて戻ってきた。蒸し暑さのせいで、二人とも全身がべたべたしていた。

「思っていたより暑かったね…べったべた!あ、疲れちゃってない?大丈夫?」
「大丈夫。あ、そういえば叔父さんに連絡してなかった。」

 気付けば閉店時間は過ぎていた。健人はスマートフォンを取り出した。

「あ、出たら私に代わってもらってもいい?」
「いいけど、なんで?」
「だって、私がお世話になるわけだし…。」
「泊まってほしいってお願いしたの俺だし、まずは自分で説明するね。その後でもいい?」
「もちろん。」

 比較的すぐのコールで、オーナーは電話に出た。

「もしもし。今、電話しても大丈夫?」
『もちろん。体調は大丈夫?』
「…綾乃ちゃんに話してくれてありがとう。ちょっと大丈夫になったよ。びっくりしたけど、嬉しかった。…安心した。」
「綾乃さんにちゃんとお礼は言ったかい?」
「いっぱい言った。」
「そうか。それで、用件はそれだけ?」
「ううん。あの、綾乃ちゃんに今日、家に泊まってもらいたくて。」
「ああ、そんなこと?いいよ、僕は。帰るのに…そうだな、あと1時間はかかるから、それまでに二人でしたいことはしておきなさいね。」
「…どういう意味?」
「鈍感だなぁ。僕は二人が仲良くしているところを見ても微笑ましく思うけど、綾乃さんは恥ずかしいかもしれないだろう?健人は何も思わないかもしれないけど、そういうところはきっと他人の目を気にするだろうから配慮してあげなさいね。」
「そういうことか!うん。あ、綾乃ちゃんが話したいって言ってるから代わるよ?」
「はい。」

 健人にスマートフォンを差し出されて、綾乃はそれを手に取った。