* * *

 健人が風呂から出ると、綾乃はソファーの上でタオルで髪をわしゃわしゃと拭きながら乾かしていた。

「あ、出てきた!じゃあ飲もっか!」

 健人の顔を見るなり、濡れたままの髪でスッと立ち上がり、おもむろにグラスを2つ取り出して並べる。冷蔵庫にはよく冷えたサングリアが眠っていた。

「お試しだからいっぱいは入れないよ?」
「はい。」
「私も健人くんと同じくらいにしておく…。」

 ブルーベリーと白桃、オレンジなどのフルーツがたくさん入ったサングリアが、ソファー前のテーブルに置かれた。健人は静かに、ソファーに腰掛けた。綾乃も隣に座り、グラスに手を伸ばす。

「20歳のお誕生日に、乾杯!」
「乾杯。」

 チリンと柔らかくグラスが鳴る。喉を通るそれにはフルーツ特有の酸味や甘みがあるものの、遠くにピリッとした今までに感じたことのない熱さもあり、これがアルコールかと健人は一人で納得した。

「…大丈夫?」
「あ、はい。ちょっと喉を通った時にすーってした感じがあって、それがアルコールかなと思って飲んでました。もっときついのかなって思ってましたけど、そうでもないですね。飲みやすいからぐいぐい飲んじゃいそうです。」
「…もしかして、私より強い?」
「かもしれませんね。」
「お酒強いの、いいなぁ。私も色々飲んでみたいけど、潰れたら困るからさ。」
「僕がもう少し色々飲めるようになったら、試しましょう?僕が強いってわかったら、綾乃さんが潰れないように残った分、飲みますし。」
「いいの?」
「はい。お酒が飲める年齢になったから、僕も色々試してみたいです。」

 健人がそう言うと、綾乃はにっこりと微笑んだ。と思ったら、すぐさま表情が変わり、「あ」と言って立ち上がる。

「プレゼントをね、ちゃんと用意したんです!もっと前に渡せばよかったね。」

 綾乃は一度、寝室に戻り、小さな袋を持って戻ってきた。