会いたいのは、綾乃だって同じだ。想っていても、それは口に出さなければ伝わらない。健人はたくさん口にしてくれる。だから自分も頑張らなくてはと、綾乃は小さく息を吸った。

「…私も、朝でも夜でも健人くんが来てくれたら嬉しい。顔見れたら、すっごい元気出る。」

 言い終わる頃には耳が熱かった。赤くなった顔も耳も見られたくなくて、綾乃はぽすっと健人の胸に頭を預けた。

「はぁ~…顔見ないでね、しばらく。」
「はい。あ、じゃああの、僕、目を瞑ってるので、僕に背を向けて座り直してもらえませんか?」
「え、えっと…?」
「綾乃さんとくっついて映画観たいなって。後ろから僕がぎゅってすれば、綾乃さんの顔、見えませんよね?」
「そ、そうだけど…。」
「ずっとぎゅってしたままにはしません。だけど、ちょこっとでいいのでくっついていたいから…。ダメですかね?」
「…わかった。ダメじゃないです!目、瞑ってください。」
「はーい!」

 随分かわいい返事だ。本当に健人はスッと目を閉じた。綾乃は足の間に静かに座り直す。ふぅと少しだけ息を吐いた。

「目、開けてもいいですか?」
「う、うん。」
「1回ぎゅってします!」
「はい!どうぞ!」

 運動部の合宿のように気合の入った声で返してしまう。綾乃の赤く染まった耳に気付いた健人は軽く綾乃に腕を回した。

「久しぶりの綾乃さんだ~。」

 すりすりと少しだけ肩に重みを感じる。そしてそれはすぐに止まり、腕も緩んだ。

「チャージ完了です。ありがとうございます。疲れたら、後ろにもたれても大丈夫ですからね。」
「…疲れてなくても、もたれていいの?」

 綾乃がそう問うと、健人はにっこり笑って『はい』と言った。