「あ、AVとか観てる?」
「観たこと、ないです。」
「うわまじかー!え、一緒に観るか?」
「えっ、あっ…いやあの、勉強が必要だってことはわかるんですけど、その、AVって、女性の裸が映りますよね?」
「まーそりゃそうだな。」
「…家族以外で最初に見る女性の裸は、知らない人より綾乃さんがいい、んですけど…。」
「うわー…かっわいいこと言うじゃん。かわいいなーこのやろー!」
「わっ!」

 瑠生の両手が健人の頭をぐしゃぐしゃにしながら撫でまわす。

「瑠生さん~!」
「綾乃もたまんねぇ~って思うときあるんだろうなこれー!」
「僕、変なこと言いましたか?」
「いーや、全然。可愛いことしか言ってねぇ!じゃあAVはなし。イラストまでならオッケー?」
「…イラスト…?」

 ハウツー本なるものがどのようなものなのかも、全く想像がつかずに健人は曖昧に返事をする。そんな姿を、軽く笑って見つめながら瑠生が口を開いた。

「とりあえず家帰ったら確認する。まず連絡先教えてよ。困ったら、つーか困んなくても連絡して。綾乃のことで一人で悩んだりあれこれ考えるより、綾乃のこと、ちょっとでも知ってる俺に相談するのって悪くねぇと思うんだけど。」
「そんなに、色々助けていただいていいんですか?」
「うん。俺も弟できたみたいで楽しいし。」
「…ありがとう、ございます。」
「まずはキスの成功!んでセックスってなったときのために、知識は仕入れておく!実践については、まぁ頑張って綾乃と相談しろ。」
「……あの、本当に、無知でごめんなさい。」
「それどころじゃなかったんだからしゃーねーだろ。生きんので精一杯って時期もあったんだろうし。今は今、やれることやっていこうぜ。」

 瑠生の大きな手が健人の背中を軽く叩く。優しくて逞しい手が、健人は今日一日で好きになってしまった。