「…手を繋ぐ、デートをする、抱きしめる、キスをする、セックスをする、大雑把な流れだけどこんなもんじゃね?」
「…なる、ほど…。」
「知らねぇわけじゃ…さすがにねぇよな。」
「一応、知識としてはわかります。ただ、こういう順番で距離を縮めていきたいみたいな流れが人によって違うのかなとか、綾乃さんはどういう流れがいいのかなとか。」
「まーそうだな。綾乃は多分違うと思うけど、体の相性から確かめたいみたいな人もいるしなぁ。」

 綾乃がそういうタイプだったら、健人ではだめだっただろう。綾乃も概ね、瑠生と同じ流れで話していた。

「んで、順番通りにはきてるわけ?」
「そう、…ですね。瑠生さんが言っていた抱きしめる、までですね。」
「付き合ってどのくらい?」
「2週間くらいです。」
「そっかぁ。めっちゃ楽しいときじゃね、一般的には。」
「楽しさは…そうですね、前より増えたけど、でももっと前から嬉しかったし、楽しかったですよ。」
「健人的にはもっとってなんねーの?」
「もっと…、欲張りになってる自分は…何となく感じています。」
「うん。」

 触れたくなって、抱きしめたくなって、でもその度に戸惑う綾乃にも、健人はちゃんと気付いていた。

「唇へのキスはしていないけど、…それは、失敗しちゃったらという気持ちもあるんですけど。」
「うん。」
「僕から触れるとき、急だとちょっとだけビクッとするんです、綾乃さん。」
「ただ驚いてるんじゃなくて?」
「それだけなのかわからないんですけど…。嫌じゃないって言ってくれてるので嘘ついてるとかいうわけではないのかなって思うんですけど、ビクッてしたり、少しだけ震えていたりすることもあって。綾乃さんから抱きしめてくれたときは、そういうのなかったので。」
「綾乃がする分には大丈夫で、綾乃がされるときにはちょっと心の準備が間に合ってない感じか。」

 健人は静かに頷いた。