* * *

「っし!まだ寝ないよな?」
「あの、本当にベッドじゃなくていいんですか?」
「いや、だってベッドは健人のじゃん。」
「それはまぁ、そうですけど…。僕、布団でも大丈夫ですよ…。」
「俺はどこでも寝れるし。とりあえず本題!」
「は、はいっ!」

 ベッドに座った健人と、布団の上にあぐらをかいている瑠生。必然的に健人が瑠生を見下ろす形になっているのが、健人には心苦しい。そんなことはお構いなしに瑠生は口を開いた。

「健人さ。」
「はい。」
「綾乃のこと、どんくらい好き?」
「どのくらい…?」

 考えたこともないことだった。好きを量に換算して考えたことがなかった。

「…えっと、考えたこともなかったです。好き、には…量があるんですね。」
「量っていうか、過去の彼女と比べてとかさ。」
「過去の彼女、いないので比べようがないです。」
「えっ!?まじ?健人、モテそうなのに!」
「モテないですよ。」

 健人は苦笑した。瑠生はまじまじと健人を見つめる。

「健人の周りの女って見る目ねぇんだな。」
「周りに女性がいたのかどうかも…曖昧です。周りのことがよくわからないんです。」
「なんでって、俺がつっこむと健人、困る?」
「困らないですよ、今はもう。」

 綾乃が受け止めてくれたから、少しだけ前に進めた。だから今は、前より怖くはない。