伯爵は大仰にため息をつくと、リリシアを睨んだ。

「お前の口出すことではない。いったい何のつもりだね。婿どの、ご自分の奥方の手綱をしっかりと引き締めてくださらないと」

「お義父様……、私は修道院で、とても良くして頂きました。このままではお気の毒すぎます。どうか、もう一度」
「では、お前が引き取れば良いだろう?お前の父親も修道院育ちだろう。幼児と爺さんくらいなら、グリンデルのだだっ広い領地にいくらでも住めるのでは?」

 伯爵はからかいを含んだ声でリリシアに言う。

 リリシアはぐっと言葉につまる。彼女にそんなことをする権限はないからだ。

「わ、私は……そのようなことをお願いする立場にありません。……ですから、どうか考え直してほしいと」

 胸の前で両手を組み、リリシアは嘆願する。だが伯爵は冷たい表情をさらに固くするだけだ。

「失礼。親子の議論に割って入ることをお許しください」

 セヴィリスがゆっくりと一歩前に出た。