「そ、れは、どういう?こと?」

朧げだったこの話の輪郭が少しずつ、少しずつはっきりしてくる。

「このグリンデルの地で貴女を守る。そのために貴女に求婚した。それが私の聖騎士としての責務だ」

 彼は決意を秘めた口調でそう告げた。

「え……?ち、ちょっと……おまちください……そ、そのようなことで?私と……?」

 婚姻をなさったというの?彼女はあっけに取られた口調でセヴィリスを見る。驚きすぎて肩の疼きなど、どこかへ飛んでいってしまった。

 だって、それではこの方に利益など何もないではないか。

 彼は少しむっとしたように口をへの字にした。

「そうだよ。これが一番手っ取り早い方法だったからね。でも、貴女を守るというのは『そんなこと』じゃない。貴女の魂にかかわることだ。聖騎士は魔物から人々を守り抜くのが使命だ」
「で、でも……っ」

 リリシアはなおも言い募る。

「……もちろん、この婚姻が国の常識の範疇ではないことは承知だけれど」

 彼は小さくため息をついた。