「魔印は少しずつ君を侵食していく。生気を奪って成長し、やがて君の身体と魂を喰らうんだ。そうすると、身も心もあの魔物のものになってしまう」

セヴィリスの言葉は地の底から聞こえる不吉な予言のようにリリシアの体を這い上がる。彼の話は冗談でも世迷言でもないと、自分の肩の疼きが教えてくれる。リリシアは心臓がギュッと掴まれた気分になって胸を押さえた。

(な、なに、そんなこと……。ど、して……どうしたら、いいの)

いつもは安心できるペンダントさえ肌に冷たく感じられてしまう。

リリシアはかたかたと震える手で、とっくに冷めてしまったティーカップを寝台の側の台に戻した。

そこへ、セヴィリスの手がふわりと重ねられる。

「……あの魔物を倒しきれなかったのは私の責任だ。だから貴女をこの屋敷に迎えた」