「やめてほしいなら、お前も変な噂をたてるのやめろ。暮石が迷惑がってるだろ」

「な、俺はただ……その、お似合いだなって思っただけだっての!」

「はいはい、アリガトー」



男子をイイ感じにあしらった黒瀬くんを見て、みんな笑っていた。

「確かにやりすぎだよー」なんて、私たちを庇ってくれる子もいる。


黒瀬くん、すごいなぁ。

私も黒瀬くんみたいに言えば良かったんだね、反省……。


そしてスイッと、背中を向けて去ろうとする黒瀬くん。

私は思わず「あの」と、呼び止めた。



「ありがとう、さっきの……」

「別に」

「……あの?」



別に――と言ったきり。黒瀬くんは私を見て動かない。

そういえば、さっきもノートを渡してくれる時、固まっていたような……。


私が「どうしたの?」と聞く前に、黒瀬くんは「あのさ」と言った。