玲はしばらくジッと真面目な顔であたしを見つめたあと、フッと柔らかな笑顔になった。 その優しい顔に少しドキリとする。 「そうだな。りくは何かを簡単に手放したりしないヤツだもんな。俺がお前のこと好きになったのは、そういうとこだよ」 胸が焼けるように熱い。 頬がほてっているのがわかる。 あたしはきっと今真っ赤だ。 何もない状態で、この家にあがりこんだあたしが 今では手放したくない何かがあるなんて、不思議だ。