真っ直ぐな眼差しを向けられ、凛は図らずも赤面してしまい、慌てて俯いた。

なにせ亮介は顔も声も極上なのだ。うっかり見つめ合ってしまえば、その視線が熱を帯びていて、まるで自分を口説いているかのような勘違いをしそうだ。

手放したくないとストレートな言葉を言われているのは、秘書としての自分だ。決して女性としてではない。

少しでも頭を冷やそうと脳内でバケツの水を頭から何杯も被り、冷静に思考を巡らせる。

(秘書として認められているのは嬉しいし、私だってこの仕事を辞めたくない。でも、だからって結婚する? 自分が仕える副社長と? 有り得なさすぎる……!)

一介の社員である凛と、大企業を背負って立つ立場の亮介では、あきらかに釣り合わない。家柄が違えば価値観もズレるだろうし、容姿すら歴然たる格差がある。

亮介はいずれ社長になるのだし、結婚相手は彼を献身的に支えられる女性でなくてはならないはずだ。

自分ではとても相応しいとは思えない。

「あの、やっぱり……都合がいいとか、メリットがあるとか、そういう理由での結婚は後々後悔されるのでは?」
「後悔?」

今は仕事が忙しくて恋人を作る暇がないのかもしれないが、落ち着いた頃に恋愛を楽しみたい時が来るだろう。