「申し訳ありません。もう一度よろしいでしょうか」
「俺と結婚しないか、と言った」
「……すみません、どうも耳の調子がおかしいようで」
「その反応なら、正しく聞こえてるだろう。俺の妻にならないかと聞いている」

一体、今自分はなにを言われているのだろう。

聞き間違いでなければ、プロポーズをされているような気がする。

顔には出さないまま頭の中で思考を巡らせたが、亮介がこの手の冗談を言うタイプではないのは一緒に働いていればわかるし、かといって女性として彼から想われているとも考えられない。

プロポーズの意味を持つ言葉を口にしているのに、彼の声音は淡々としていた。

「あっと、ええっと……」

およそ秘書らしくない意味をなさない言葉しか出てこず、完全に混乱していた。

なぜ亮介が突然、結婚を申し込んできたのか、意図がまったくわからない。