凛は縋り付くように亮介の胸元に頬を擦り寄せる。
すると、頭の上で亮介の喉がグッと鳴った。
「そうやって甘えるのは、俺だけにしてくれ」
「……亮介さんにだって、こんなみっともない姿を見られたくなかったです」
すんと鼻をすすりながら、凛は口を尖らせる。
「みっともなくなんてない。泣かせてしまって申し訳なく思うのに、素直に感情をあらわしてくれるのが嬉しくて、甘えてくれる凛が可愛くて、愛しくて、どうにかなりそうだ」
「そんな、だって……めんどくさくないですか?」
「ありえない。俺は君に関しては独占欲の塊らしい。その姿を俺以外に見るなんて許せないし、他の男が君に触れている写真を見ただけで、身体中の血が沸騰しそうだった」
独占欲。そう亮介は言った。
たしかに結婚を承諾しているのだから、凛は間違いなく彼のものだ。
けれど彼の物言いは世間体の悪さから不貞に嫌悪を示しているものではなく、誰にも凛に触れさせたくないという嫉妬心からくる焦燥のような響きを感じる。
凛は思わず顔を上げ、その真意を確かめようとじっと見つめた。