「すなまい、言葉の足りない俺が悪かった。情報漏洩の件はもちろん、浮気を疑ったわけでもない」
「怖かった……もう秘書室から異動しなくちゃいけないのかとか、辞めさせられるんじゃないかって……」
「そんなわけないだろう。凛がどれだけ俺や会社のために働いてくれているのか、俺が一番よく知っている」
「だって、帰り際、笑ってもくれなかった……。なにかひと言言ってほしかったし、電話もほしかった。あんな写真に、惑わされないでください……」
「そうだな。俺が悪かった」

これまで堪えてきたものが決壊したように泣く凛を、亮介は慰め、甘やかす。髪を梳きながら謝り、背中を撫で、トントンと労るようにたたいてくれる。それが心地よく、凛はうっとりと瞳を閉じた。

(こんなふうに他人に自分の感情を曝け出すなんて、生まれて初めてかも……)

母子家庭で、幼い弟妹の面倒を見なくてはならなかった凛は、母を困らせまいと無意識にいい子であろうとしてきた。

それを苦痛に思ったことはないけれど、こうして甘えるという心地よさを知ってしまった今、これまで以上に自分を律していかないとダメになってしまう怖さを感じる。

亮介は優しい。その優しさに寄りかかって、むやみに甘えないようにしなくては。

(でも今だけは、このままでいたい)