孝充に裏切られて負った傷は亮介によって癒えてはいるが、痛みを忘れたわけではない。
たとえ恋愛から始まった関係でなくても、亮介と凛が同じ温度で想い合っていないとしても、他の男性とどうにかなるなんてあり得ない。
その裏切りでどれほど傷つくのか、身をもって知っているのだから。
きっぱり言い放つと、亮介はハッとした表情でこちらを見つめている。
「亮介さん、言ってくれましたよね? もっと周りに頼ったり甘えたりする術を覚えろって」
唐突に切り出した凛の言葉を不思議に思いながらも、亮介は頷いた。
「だったら、お願いです……もう一度、抱きしめてください」
「凛」
「私を、疑わないで……疑っていないと、信じさせてください……っ」
抱きしめて、甘やかして、安心させてほしい。
そんな思いを込め、嗚咽を堪えて小さく呟くと、亮介は強く囲い込むように抱きしめてくれた。