「あの、違いますから! あ、いえ、写真に写っているのは修ちゃんで間違いないんですが、本当に偶然会ったんです」

凛は彼と会った経緯や、同僚との結婚報告のために実家に来ていたこと、ふたりでお茶をしたが三十分ほどで解散したことを説明した。

「それに、どうして初恋って……」
「男がコスメを贈るなんて、付き合っている相手にしかしないだろう」
「違いますよ! 修ちゃんとはそういうのじゃないです。たしかに憧れのお兄ちゃんではありましたが、私とは五歳も離れてるんですから」
「俺も君と五つ違いだが」
「今はともかく、子供にとって五歳の差は大きいです。私が中学生の頃、修ちゃんは大学生でしたし、リップも彼女と選んでくれたみたいです。その当時の彼女と結婚するんだって、幸せそうに話してくれました」

初恋だなんて、そんなにしっかりとした想いではなかった。

同級生の男の子よりも大人で優しく、たまに会うと緊張してドキドキしていたけれど、それが恋だったかと言われると、きっと違う。

「抱き合っているように見える写真は、私が躓いて転びそうになったところを支えてくれた瞬間を切り取られたものだと思います」
「そう、だったのか」
「私は……浮気なんて絶対しません」