「あの場で証拠もないのに凛を庇う発言をすれば、もっと君の立場が悪く見えると思った。凛にだけは少しも疑っていないと連絡すべきだったのに、早く疑いを晴らしたいと犯人探しに躍起になってしまった」
「じゃあ……」
「君を信じている。そうでなければ、秘書としてそばに置いたりしない」

凛が犯人ではないと信じていたのなら、真犯人は別にいることになる。それも、かなり近い位置にいる可能性が高い。慎重になって当然だと落ち着いた今なら納得できた。

「情報を美堂へリークしたのは、原口だった」

亮介が吐き捨てるように告げた思いもよらない事実に、凛は絶句して目を見開いた。

メールを見た瞬間も、デスクからUSBを見つけた時も、孝充はあんなにも凛を非難していたのに、実は情報漏洩していた張本人だったとは。

「そんな、どうやって……」
「君のパソコンに細工をして、自分のパソコンから遠隔操作でサーバーのフォルダにアクセスできるようにしていた。原口がいつ君のパソコンにそんな細工ができたのかは本人に聞くしかないが……」
「あっ! たぶんお昼休みです。秘書室を無人にするわけにはいかないので、チーフは一時間お昼休みをずらすんです。基本グループ秘書の誰かが一緒にいますが、最近はずっと近藤さんと一緒でしたし、別の人でもその人がお手洗いとかで席を外した時になら……」
「なるほど。そのあたりも含めて明日以降、彼から話を聞く」