「ハッキリ言って、孝くんに未練を持ち続けられるのは迷惑なんです。彼と結婚するのは私ですから。さっさと会社を辞めてください」
「どうして私が仕事を辞めなくちゃいけないんですか」
「あなたが孝くんのそばにいるのが嫌なんです。ストレスでお腹の赤ちゃんになにかあったらどうしてくれるんですか? 自分から辞めないなら、私のパパにお願いして解雇してもらいますから」
「な……っ」

あまりにも横暴な言いがかりに、言い返す言葉が見つからない。

いくら大きな会社の重役令嬢とはいえ、他の企業の社員を解雇させるなど可能なのだろうか。

(でも専務の口利きで入社してるのなら、もしかしたら……)

そう考え、背筋がスッと冷たくなる。

憧れのリュミエールに入社するために就職戦争を乗り越えてきたのだ。

秘書室に配属されてからは必死に仕事を覚え、マナーを叩き込み、副社長に専属でつくようになってからはなおさら激務に身を投じてきた。

その甲斐あって、今では自分の仕事にプライドを持って働けるまでになったのだ。