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その日の夕飯は大根の味噌汁にカブの天ぷら。
それに焼いた秋刀魚に大根おろしを載せたものだった。

「これは薫子が育てたカブと大根か?」
「そうです。でも、ほとんどあの果物のお陰で育ったんです」

薫子は野菜が取れたことがよほど嬉しいようで、さっきから笑顔が耐えない。
「そうか。菜園に役立ったのならよかった」

味噌汁の中の大根は柔らかく、噛むと染み込んだ汁がジワリと溢れてくる。
カブの天ぷらもサクサクして美味しい。

「こっちの大根おろしは違う味がするな」
大根おろしで秋刀魚を食べた切神が言った。

「気が付きましたか? そっちの大根は今日のお供え物で作ったんです」
「そうか。今日も村人が来たんだな」

「はい。私の友達ふたりです」
薫子がずっと嬉しそうな顔をしているのは、どうやら菜園のせいだけではなかったみたいだ。

ひさしぶりに友人と会話したことで気持ちが浮ついているのがわかった。