ほどけないようにしっかりと結ばれているそれを、繊細な指先で解いていく。
重たい帯がするすると解けていき、ドサッと床に落ちた。

それから着物を一枚ずつ丁寧に縫いでいく。
この白無垢はできれば綺麗に保管しておきたいけれど、それはできないだろう。

薫子はこれから切神の生贄となるのだから、着物のことなんて考えてはくれないはずだ。
そう思うと少しだけ悲しい気持ちになった。

その気持を振り払うように寝間着の浴衣へと袖を通す。
サラリとした肌触りに、とても柔らかい生地。

これは上物だとすぐに気がついた。
薫子が着るどころか、触れることさえできないような寝間着に一瞬とまどう。

だけどすぐ近くにいる切神をいつまでも待たせるわけにはいかなくて、手早く着替えた。
白無垢はとりあえずで畳んで部屋の角へと置いておいた。

「できました」
切神が振り向くとそこには三指をついた薫子がいた。
白い寝間着姿もよく似合っている。