「ここに、こんな部屋があったなんて」
驚きを声にしつつ、切神に促されて隣の部屋に足を踏み入れた。

後ろから切神が右手を空中へ向けて開いて見せると、そこから小さな火がポッポッポッと3つ浮かんできて、部屋の中を楽しげに踊り始めた。
それは昨日薫子が本殿の中で見た火と同じものみたいだ。

火は部屋の中をオレンジ色に照らし出し、そこが6畳ほどの畳の部屋であることと、すでに二組の布団が準備されていることに気がついた。

布団を見た薫子の頬が少しだけ硬直する。
今自分がどうしてここにいるのか、布団を見た瞬間に思い出した気分だ。

盗賊たちはすでにいなくなった。
あとは自分が生贄としての役目を果たすのみだ。

「寝る前に着替えをしたほうがいいな」