もうひとつカゴの中から栗ご飯のおにぎりを取り出す。
中を確認してみると大きなおにぎりがあと3つ入れられていることに気がついた。

こんなに沢山作ってくれるなんて。
思わず涙が滲んできて、慌てて手の甲でそれを拭った。

「お前がもったものだろう。私が食べるわけにはいかない」
「沢山あるから、大丈夫です」

薫子はそう言うと少し強引に切神の手におにぎりを載せた。
切神の手の平にはピッタリサイズだ。

切神はしげしげとおにぎりを見つめた後、それを一口くちに入れた。
なにかを確かめるように丁寧に咀嚼していく。

ゴクリと飲み込むのを確認して「どうですか?」と、恐る恐る質問した。
菊乃が作ってくれたものだから美味しいはずだけれど、薫子の心臓はドキドキしている。

「うん。うまいな」
満足そうに言う切神に薫子はホッとして自分の分のおにぎりを口に運ぶ。