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狭い本殿の中に気配を感じたのは、村人たちの姿がなくなってからだった。
ギッと床の軋む音がして薫子はそちらへ視線を向ける。

するといつの間に切神がそこに立っているのだ。
「どうやら盗賊はいなくなったようだ」

「あ、ありがとうございます! これでみんな平和に暮らすことができます」
薫子はすぐに正座をして頭を下げた。

「いや、私がいなかったことで色々と被害もあったようだ。悪かった」
切神が薫子の前にあぐらをかいて座り、そういうので慌てて左右に首を振った。

「神無月であることを失念していたのは私たちです。覚えていれば、神様が動けないことも承知していたはずです」
決して切神のせいではない。

出雲では神々の大切な話し合いがあったはずだ。