薫子が菊乃の腕を掴んで庭へ回ると、そこには切神が立っていた。
人の気配に気がついて様子を伺っていたのだろう。

「なにこの菜園!」
表からではとてもこんな広い庭が見えるようには見えないので、菊乃が驚きの声を上げた。

「これが本当の神社の姿なの」
神域へ招き入れたことで、菊乃にもこの屋敷の全貌が見えている。

菊乃はとんでもなく広い屋敷に口をポカンとあけて立ち尽くしてしまった。
「これを見て」

それから薫子は沢山の実をつけている野菜や果物を菊乃に見せた。
「夏野菜と冬野菜が一緒に育ってる。こんなことありえないよ」

「そうだよね。だけどここではそれができるの」
薫子はそう言うとキュウリを一本ちぎって菊乃に差し出した。

菊乃はそれを恐る恐る口へ運ぶ。
歯で噛むとカリッとしたいい音が響く。

「……おいしい」