途端に寂しさが胸を支配していく。
「そんな顔しないで。私は大丈夫だから」

菊乃が薫子の肩を何度も叩く。
自分はこんなに元気だと、薫子を安心させようとしているのが伝わってくる。

「あのさ菊乃」
薫子はなにか思いつめた表情になって菊乃を見つめた。

菊乃も薫子の肩を叩くのをやめて真剣な表情になる。
「考えたんだけど、よかったらこの屋敷で仕事をしない?」

「え?」
思ってもいない申し出に菊乃は戸惑いの表情を浮かべた。

「屋敷って、神社でってこと?」
菊乃はキョロキョロと周囲を見回して首を傾げた。

まだ屋敷内まで足を踏み入れていない菊乃からすれば、ここはとても小さな神社に過ぎない。
人を雇う必要を感じないのだろう。
「こっちへ来て」