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薫子がサンゴのカンザシをつけて菜園で野菜の世話をしていると、境内を歩いてくる足音が聞こえてきた。
同時に「薫子」と呼ぶ声が聞こえてきて、じょうろを持つ手を止めた。

境内へ向かうとそこにいたのは沢山の山菜を持った菊乃だった。
「菊乃!」

薫子はすぐさま菊乃に駆け寄った。
切神がちゃんと縁切りしたかどうか確認したいと思いながら、そんなことをしたら切神の力を信用していないことになってしまうと考えて躊躇していたところだったのだ。

「薫子!」
菊乃はお供え物を地面に置くと両手を伸ばして薫子を力いっぱい抱きしめた。
薫子が苦しくて目を白黒させたくらいだ。

「菊乃、あれからどうなったの?」
ようやく体を離して質問すると菊乃が満面の笑みを見せた。