それほどまで菊乃の覚悟は硬かった。
それからしばらく押し問答をしていた菊乃と薫子だったが、ふと思い出したように薫子が切神を見つめた。

「どうした?」
「私からのお願いです」

薫子はそういうとカンザシを切神へ手渡した。
切神は不審そうな顔つきで薫子を見つめる。

「これは私から切神さまへのお供えものです。神様どうか菊乃と悪徳金貸しの縁を切ってください」
その場に膝をついて本気で願掛けする薫子を見て、菊乃も横に座り込んだ。

そして同じ様に手を合わせる。
「か、神様お願いします!」

ふたりの女にお願いされて切神は呆れたようなため息を吐き出した。
「薫子の願いにお供えはいらない」