「最初は生贄になったくせに薫子の方がよほどいい生活をしているようだから、妬ましくなったの。それからカンザシくらいなら盗んでも大丈夫だろうと思って、手を伸ばした。だけどお金に帰る直前でやっぱりこんなのよくないと思って、できなかった」

菊乃は話ながらボロボロと涙をこぼし始めた。
「だってこれは大切な友達のカンザシ。薫子は村のためを思って自分から生贄になってくれたのに、こんなふうに妬むなんて間違ってる」

「それで、返しに来てくれたの?」
菊乃はコックリと頷いた。

両目とも真っ赤になっている。
薫子はカンザシを握りしめて切神へ振り向いた。

切神は無表情で二人のことを見つめてる。
「切神さまお願いがあります。これを菊乃にあげてもいいですか?」