「私の両親は死ぬ前に借金をしていたんです。正規の金貸しからではありません。あくどい業者に騙されて借りていました」
「金額は?」

菊乃が答えた金額は死ぬまで働いてもとても返せない金額だった。
薫子は愕然として菊乃を見つめる。

「今月中に返済できなければ身売りさせる。そう脅されていて、怖くてついこれを……」
カンザシをギュッと握りしめて嗚咽を漏らす。

「そんな。それだけの大金を今月中に返すなんて無理でしょ」
「そんなの、あいつらに説明したって通用しない。そうやって沢山の娘たちで金を稼いでいる連中だから」

カンザシが高く売れたとしても、きっとどうにもならなかっただろう。
それでも奪って逃げてしまうくらい、菊乃は追い詰められていたのだ。

「どうしてこれをお金にしなかったの?」
「……できなかった」

菊乃はうなだれてつぶやいた。