そこには切神がぴたりとついて来ていた。
薫子は兄弟と同じように目を見開いて絶句してしまった。

そのくらい切神の容姿は人間離れしている。
「切神さま?」

菊乃からの質問に「そうだ」と、切神が短く頷いてみせた。
「こ、この度は申し訳ありませんでした!」

まさか薫子と共に神様が姿を見せるとは思っていなかったのだろう。
菊乃は顔面蒼白になり、その場にひざまずいた。

そして着物のたもとに手を入れると、カンザシを取り出したのだ。
「気の迷いでこれを取ってしまいました」

陽の光でキラリと光るカンザシに薫子の胸がチクリと痛む。
やっぱり盗んだのは菊乃だったのだ。

「どうしてこんなことを?」
薫子からの質問に顔を上げた菊乃は目に一杯の涙を浮かべている。