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不思議な果物を堪能していたときのことだった。
境内の方から足音が聞こえてきて薫子と切神は視線を見交わせた。

また誰かが願掛けに来たに違いない。
「今年の冬は豊作のはずだがな」

切神がそうつぶやいたとき、以外声が境内から聞こえてきた。
「薫子、いるの!?」

その声は間違いなく菊乃のものだった。
薫子はハッと息を飲んで切神へ視線を向ける。

切神はすぐに険しい表情になって立ち上がった。
「待ってください」

境内へ向かおうとした切神の腕を掴んで引き止めた。
「菊乃は薫子を悲しませた相手だろう」