屋敷へ戻ってきた薫子はまず温かいお湯で体を清めた。
村では月に何度かお風呂に入れればいい方だから、昨日は入っていなかった。

方まで湯船に浸かれば泣きつかれがスッと消えていくようだ。
体の疲れもジワジワと溶け出していく。

自分にとってはこれが当然の生活になっていたけれど、村では違う。
こうして1度村に下りたことでそれを痛感させられた。

みんな野良仕事で疲れた体を、湯船でゆったり休ませることも難しい生活をしているのだ。
お風呂から出ると切神が暖かなお粥を準備して待ってくれていた。

「ごめんなさい。私がやらないといけないことなのに」
「疲れているんだ。今日くらいはゆっくりすればいい」

薫子は小さく頷いて山菜の入ったお粥を口にした。
丁度いい暖かさに今度は体の奥からジワリと温まってくる。