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 使者が一時的に引き上げていったあと、王城では王族と重臣たちを円卓の間に集め、緊急会議が開かれた。
 王の横に王妃が座り、そのそばにはフランの妹のマーガレットが着席する。そしてフラン自身も緊張の面持ちで、並びの席に腰を下ろした。

 話し合いが始まったが、シャムール王バウムは、すでに降伏することを決めていた。

「皆も、異存はないな」

 参席している臣下たちの中に、反論する者はいない。安全と引き換えに国力を搾取されることにはなるが、やむを得ないだろうと。

 通常は、占領されたら国民は捕虜となり、旧統治者である王族は処刑されるケースが多い。だが帝国の通告によれば、へたに逆らわなければ今までどおりの体制を維持してよいという。

 命も統治権も奪われないことは、破格の条件に違いない。
 高官のひとりが、帝国についてわかっていることを報告した。

「最強といわれる軍事力を持つヴォルカノ帝国は、西の大国と領地を取り合っていて、どちらが世界地図のピースを多く埋められるかを競っているようです。きっと支配の冠が欲しいだけで、実務には興味がないのでしょう」

 周囲は、まるで他人事のようにうんうんと頷いている。

「問題は、末尾に付記されている、王女様を差し出せというものですが……」

 遠慮がちではあるが核心に触れた高官の言葉に、マーガレットがわっと泣きだした。