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 聞き慣れない大砲の音が鳴り響いたとき、島は何隻もの軍艦に囲まれていた。

「敵襲! 敵襲だーーーっ」
「ヴォルカノ帝国が攻めてきたぞーーーっ!」

 敵味方入り乱れる荒々しい足音が、島内の空気を揺らす。
 響く怒号に、金属がかち合う音、逃げ遅れた人々の悲鳴――。
 フランをはじめとする女性たちはわけもわからず、ただ避難した城の奥に隠れ、身を震わせるしかなかった。

(なにが起きているの……? 怖い……)

 黒い船から降り立った恐ろしげな軍勢は、あっという間に島の中心部に入り込み、王城を取り囲んだ。シャムールの騎士団は死力を尽くして立ち向かったが、圧倒的な兵力と強力な武器を前に、太刀打ちできる状況ではない。

 玉座の間へ敵兵の侵入を許すのに、そう時間はかからなかった。

「皇帝陛下からの最後通告である。期限は三日、速やかに回答されたし」

 不気味な黒鎧を身に着けた帝国の使者が、王に書面を突きつける。
 降伏を促す文言が書かれた羊皮紙には、要約すると次のようなことが書かれていた。

『この島全土と領海はヴォルカノ帝国の支配下に置く。おとなしく従うならば、これ以上の武力行使はしない。だが逆らうようなら容赦なく攻め滅ぼす』

『属国としたあかつきには、他国の脅威から責任を持って庇護する。統治についてもこれまでどおりの権限を与えるが、見返りとして規定の税を納めること』

『誓約の証として、国力の半分にあたる財宝および武器を差し出すこと』

 そして――『直系の王女をひとり、花離宮へ献上すること』。